Sonir/Blog/公開日 2026-07-21

スピーカーを公平にA/B比較するには?揃えるべき3条件

スピーカーのA/B比較を公平に成立させる3条件を整理。マイク位置・刺激・再生レベルを揃え、聴き比べではなく測定の差分カーブで「どこがどれだけ違うか」を読む手順。

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nadai
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Sonir. 開発者

スピーカーをAからBに入れ替えて測り直したら、低域が3dB増えた。増やしたのはスピーカーではなく、入れ替えのついでに10cm動かしたマイクだった。

結論

スピーカーのA/B比較が公平になるのは、スピーカー以外を1つも動かさなかったときだけ。揃えるのはマイクの位置・測定に使う刺激・再生レベルの3つで、効き目の大きさもこの順です。そのうえで聴き比べではなく測定を重ね、差分カーブ(A−B)で「どこがどれだけ違うか」を読む。スピーカーは聴感で公平に比べるのが原理的に難しい機材なので、Sonirは比較を測定へ倒しています。

同条件で測ればA−Bが機材の差になり、マイクを動かすと位置の差が混ざることを示した図 条件を揃えれば差分は機材の差になる。マイクを動かすと、差分に位置の差が乗る

なぜ「スピーカー以外を動かさない」なのか

差分カーブA−Bに出るのは、AとBの間で変わったもの全部の合計です。スピーカーだけを変えたつもりでマイクを動かしていれば、そこには位置の差も混ざる。しかも低域では、位置の差のほうが大きいことがある。

100Hzの波長は約3.4m。定在波の節と腹はその1/4、つまり85cmほどの間隔で並びます。マイクを30cm動かせば、谷の側から山の側へ渡ってしまうことがある。冒頭の3dBはこれでした。半日ぶんの測定を並べて「B機のほうが低域が出る」と結論しかけて、位置ログを見て全部捨てた。

一方でマイク自身の癖は、位置さえ固定していれば怖くない。同じマイクを同じ場所に置いたまま測れば、マイクの色付けはAのカーブにもBのカーブにも等しく乗るので、差を取った瞬間に打ち消える。校正マイクがなくてもA/Bだけは成立するのはこの理屈です(校正マイクなしで周波数特性はどこまで信用できる?)。

音量整合が効くのは聴くときで、測定ではない

A/B比較といえばまずレベル整合、と言われます。正しいのですが、正しいのは聴いて判断するときの話。人はわずかに大きい音を一貫して「良い」「正確」と感じるので、聴感比較ではここが最大の交絡になる。狙いは±0.1dB以内で、±0.5dBでは緩すぎます。

測定で比べるなら、この縛りは緩みます。Sonirの周波数特性は中域を0dBに正規化した相対カーブなので、再生レベルが数dB違っても山と谷の形は変わらない。測定側で本当に効くのはクリップのほうで、片方だけ振り切れると、そのカーブは形ごと崩れます。録音ピークを-6〜-12 dBFSに収めるのはそのためです(測定の録音レベルは何dBFSを狙う?)。

ちなみに、スピーカーを盲検で当てるABX機能は一度作ってから外しました。マイク1点の空気録音は定位も音場も歪みも落としてしまうので、その録音を聴いて「どっちが良いか」を結論するのは無理がある、という判断です。

手順

  1. マイクを固定して以後さわらない: リスニングポジションにマイクを置き、スタンドか三脚で固定する。スピーカーを入れ替える間も持ち上げない。
  2. 同じ刺激で両方を測る: AとBを同じスイープ・同じ帯域で。帯域が違うと軸が揃わず、差分が機材の差を表さなくなる。
  3. クリップ手前でレベルを揃える: 録音ピークは-6〜-12 dBFS。片方だけ振り切れた測定は捨てて録り直す。
  4. 重ねて差分カーブを読む: 比較タブのA/Bスロットに2つ入れ、差分(A−B)を主役に見る。RT60・EDT・C50・D50はΔ付きで並ぶ。
  5. 不一致の警告が出たら測り直す: マイク校正・刺激の帯域・部屋の食い違いは警告バナーで出る。続行はできるが、機材差の結論には使わない。

揃わないものは、揃わないと書いて残す

現実には全部は揃いません。筐体サイズが違えばツイータの高さが変わるし、置き替えでスピーカーの位置が数cmずれる。ここは正直まだ答えが出ていないところで、「同じ位置」と言い切れる置き替え手順を詰め切れていない。

Sonirがやっているのは、揃わなかったものを消さずに残すことです。マイクプロファイル、刺激の帯域、部屋、距離、機材。重ねる前にこれらを突き合わせて、食い違えば警告を出す。ブロックはしません。条件が完全でない比較にも読む価値はあるので、続行はできるようにしてあります。ただし「なぜ違ったのか」を後から言えるだけの記録は残しておく。

よくある質問

スピーカーは聴き比べで決めてはいけない?

好みを決めるのは自由です。ただ優劣の結論には向きません。マイク1点の空気録音は定位も音場も歪みも落とすので、その録音を聴いて比べても音色の粗い差しか通りません。Sonirが盲検ABXを廃止してスピーカー比較を測定オーバーレイへ倒したのはこの理由です。

音量はどこまで厳密に揃える?

聴いて判断するなら±0.1dB以内を狙います。人はわずかに大きい音を一貫して良いと感じるためで、±0.5dBでは緩すぎます。測定で比べる場合は周波数特性が中域0dB正規化の相対カーブなので、数dBの再生レベル差では形は変わりません。効くのはクリップの有無です。

マイクは何cmまで動かしていい?

動かさないのが答えです。低域は部屋の定在波で位置依存が大きく、100Hz(波長約3.4m)なら節と腹はおよそ85cm間隔で並びます。30cm動かすだけで谷から山の側へ渡ることがあり、その差はスピーカーの実力差より大きく出ます。

スピーカーの置き場所も揃えるべき?

同じ位置に置き替えるのが原則です。置き場所は部屋のモードの励起のしかたを変えるので、位置が違えばスピーカーの差ではなく設置の差を測ることになります。筐体サイズが違って完全一致できないときは、距離とメモに残して差分を読むときに割り引きます。

別の日に測った2つを比べてもいい?

条件が揃っていれば比べられます。暗騒音や室温は変わるので、同じマイクプロファイル・同じ部屋・同じ距離で測ったことを確認してください。Sonirはマイク・刺激・部屋・距離をメタとして残し、重ねる前に食い違いを警告します。

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