Sonir/Blog/公開日 2026-07-01

測定の録音レベルは何dBFSを狙う?

測定の録音レベルはピーク -6〜-12 dBFSが目安。クリップはIRを壊し、低すぎるとSNRがノイズ床に沈む。適正レベルに置き、S/Nはスイープ長で稼ぐ。

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nadai
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Sonir. 開発者

スイープのピークが0 dBFSに触れた瞬間、IRの頭はつぶれてRT60は崩れる。だからと絞りすぎれば、今度は尻尾がノイズ床に沈んで値が伸びる。落とし所は意外と狭い。

結論

測定録音のピークは -6〜-12 dBFSに置く。上はクリップでIRを壊さないためのヘッドルーム、下はノイズ床から十分に離すため。ここを外さなければ、あとのRT60も周波数特性も素直に出る。SNRが足りないと感じても音量は上げない。スイープを長くして稼ぐ。

0 dBFSに近づけない理由

dBFSはデジタルの上限を0とした目盛りで、0 dBFSがフルスケール、そこを超える波形は記録できずに頭が平らに潰れる。これがクリップだ。潰れた波形はIRの頭を壊し、シュレーダー積分の減衰カーブが寝てRT60が実際より長く出る。RT60が異常に伸びるトラブルの大半はここが原因になる。

やっかいなのは、平均レベルが低く見えても瞬間のピークだけ0に触れることだ。再生機の電源を入れた瞬間の衝撃音、椅子のきしみ、不意の物音。こうした単発のトランジェントがスイープのピークより上に飛び出してクリップする。ピークを -6〜-12 dBFSに置くのは、この不意の飛び込みぶんのヘッドルームを最初から確保しておくためでもある。

下げすぎても困る

では低いほど安全かというと、そうでもない。レベルを下げるほど、録りたい信号がマイク自身のノイズ床に近づく。スマホの内蔵マイクの床は機種によるがおおむね -70〜-80 dBFS付近にあり、ピークを -30 dBFSまで絞ると、尻尾の弱い部分がこの床に潜って減衰カーブが途中で寝てしまう。低域側のRT60ほど影響を受ける。

-6〜-12 dBFSという帯は、上のクリップと下のノイズ床、その両方の壁から距離を取れる位置だ。

ピーク起きること
0 dBFS付近クリップ。IRの頭が潰れRT60が崩れる
-6〜-12 dBFS目安。ヘッドルームとSNRを両立
-30 dBFS以下尻尾がノイズ床に近づく (長さで挽回可)

録音レベルの狙いどころを示したdBFSスケール 0でクリップ、下はノイズ床。ピークは -6〜-12 dBFSの帯に置く。足りないS/Nは音量でなくスイープ長で稼ぐ

音量ではなくスイープの長さでSNRを稼ぐ

ここが直感に反する。SNRが欲しいなら音量を上げればいい、と思うとレベルをどんどん0へ寄せたくなる。だが上げた先はクリップの壁だ。スイープ測定にはもう一本の軸がある。信号の長さだ。

対数スイープは同じ信号を時間に広げて流し、録音に逆フィルタを畳み込んでIRに畳み直す。エネルギーが時間に分散しているぶん、相関処理でノイズから浮き上がる。目安として長さを倍にするとS/Nは約+3dB稼げる。つまりレベルは -6〜-12 dBFSに固定したまま、SNRだけを別軸で伸ばせる。短く大音量より、適正レベルで長め。これが崩れない録り方だ。

余談だが、この「レベルとSNRを別々に扱える」性質はスイープならではで、手拍子1発だとエネルギーが一瞬に固まっているぶん、両者がクリップの一点で衝突する。

手順

Sonirは録音開始時に補正ゲインをロックし全区間一定に保つ。AGC(自動ゲイン)は機種ごとに確実に切る。だから一度合わせたレベルは録音中に勝手に動かない。

  1. AGCを切ってゲインを固定する: Sonirは自動でAGCを止め、開始時のゲインを全区間ロックする。まずこの前提が効いていること。
  2. スイープを流してレベルメーターを見る: 実際にスイープを鳴らしながら入力ピークを確認する。試し録りの数秒で十分。
  3. ピークを -6〜-12 dBFSに合わせる: 再生側かマイク位置で、ピークがこの帯に収まる音量まで調整する。上に張り付くなら下げる。
  4. 足りなければスイープを長くする: SNRが不足しても音量は上げない。スイープを長くして相関利得で稼ぐ。
  5. クリップ警告と減衰カーブで確認する: Sonirは単発のトランジェント (電源投入の衝撃音など) と持続的なクリップを区別するので、警告が出なければ本測定へ。減衰カーブがまっすぐ落ちていれば成功。

よくある質問

0 dBFSちょうどに合わせてはいけない?

避けます。0 dBFSはフルスケールで、そこに触れた瞬間クリップします。平均が低くても瞬間のピークだけ飛び込むことがあるため、-6〜-12 dBFSのヘッドルームを残します。

レベルが低すぎるとどうなる?

弱い信号がマイクのノイズ床 (おおむね -70〜-80 dBFS付近) に近づき、IRの尻尾が埋もれて減衰カーブが途中で寝ます。特に低域側のRT60が伸びがちになります。

音量を上げればSNRは稼げるのでは?

稼げますが、上げた先はクリップです。スイープ測定ではレベルを -6〜-12 dBFSに固定したまま、スイープの長さでSNRを別に伸ばせます。長さを倍にすると約+3dBが目安です。

空気録音(音楽)でも -6〜-12 dBFSでいい?

はい、ピークのヘッドルームを残す考え方は同じです。音楽は瞬間のピークが読みにくいので、いちばん大きい箇所で -6 dBFSを超えないよう、やや低めに置くと安全です。

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