内蔵マイクで測った周波数特性を見て「うちの部屋は8kHzが持ち上がってる」と補正をかけた。持ち上がっていたのは部屋ではなくマイクだった。校正なしのカーブは、どこを信じてどこを疑うかを分けて読む話だ。
結論
校正マイクがなくても、低域(20〜300Hz)の大きな山谷と、同じマイク・同じ位置で録ったA/Bの差は信用していい。逆に信用できないのは、絶対SPL(何dB)と中高域の細かい凸凹、それに自動PEQ。校正ファイル(.txt)は、この「信用できない側」をまとめて埋めるためにある。だから「校正なしのFRは全部あてにならない」でも「校正すれば全部正確」でもない。
相対カーブだから形は残る
SonirのFRは絶対レベルではなく相対カーブで、中域(300Hz〜3kHz)を0dBに正規化し、1/6オクターブで平滑化している。これが効く。マイクの感度が違って全体が数dB上下しても、正規化で基準がそろうので、山と谷の凸凹の形は残る。
部屋の低域モードは、45Hzに+8dB、その隣で-6dBといった桁で暴れる。対して素性のいいマイクの色付けは中高域で数dB。片方が桁で大きいので、低域の大きな山谷は校正なしでもちゃんと見える。「80Hzが盛り上がっている」は内蔵マイクでも読める、ということです。
低域の大きな山谷は校正なしでも読める。絶対レベルと中高域の癖は校正ファイルで引く
疑うのは絶対値と中高域
信用できない側を並べる。
まず絶対SPL。内蔵マイク単体では「何dB SPL」は出ない。校正でオフセットを与えていない状態では、Sonirは相対のdBFS表示にフォールバックする。騒音値やラウドネスを語りたいなら校正が要る。
次が中高域の細部。内蔵マイクには公表された周波数特性がなく、低い方はロールオフ、高い方は共振で持ち上がったり落ちたりする。この癖が部屋の凸凹に混ざる。300Hzより上の細かい山谷を1本ずつ信じて補正すると、部屋ではなくマイクを補正することになる。冒頭の8kHzがまさにこれだった。
同条件のA/Bだけは校正なしでも強い
ここがSonirのFRの使いどころ。同じマイクを同じ位置に置いたまま、スピーカーだけAとBに差し替えて測る。すると両方のカーブにマイクの癖が同じだけ乗るので、差分を取った瞬間に打ち消し合う。残るのはAとBの本当の違いだけ。
つまり絶対精度が要らない比較用途なら、校正なしの内蔵マイクでも十分に効く。「どっちが低域出てる?」「EQ後で本当に変わった?」は校正ファイルがなくても答えが出ます。Sonirが同条件録音のメタデータ(機材・位置・部屋タグ)にこだわるのは、この打ち消しを成立させるためです。
校正ファイルが直す2つのこと
校正でやっているのは式1本。
calibrated = measured + offset + freq_correction(f)
offsetが全帯域共通のズレ、つまり絶対レベルを合わせる。freq_correction(f)がマイクの周波数ごとの癖を引く。この2つが入って初めて、中高域の細部と絶対値まで信用できるFRになります。読み込めるのはUMIK / REW / FRD形式のテキストで、列の並びが多少違っても数値行として拾う。UMIKユーザーなら付属の.txtを1枚入れるだけ。
手順
校正マイクが手元になくても、信用できる範囲で使うならこう回す。
- 同じマイク・同じ位置で録る: A/B比較はこれだけで成立する。マイクの癖は両方に等しく乗って打ち消える。
- 低域の大きな山谷を読む: 20〜300Hzのモーダル域を主に見る。ここは校正なしでも形が残る。
- 絶対SPLは読まない: 相対カーブとして山谷の位置を見る。「何dB」は校正するまで出さない。
- 中高域は1本ずつ信じない: 300Hzより上の細かい凸凹は、マイクの癖が混じる前提で眺める。
- 本気で補正するなら校正ファイルを1枚: 自動PEQは校正登録済みのマイクでしか出ない。UMIKの.txtを入れて中高域と絶対値まで信用できる状態にする。
よくある質問
校正なしの周波数特性でA/B比較していい?
していいです。同じマイクを同じ位置に固定していれば、マイクの色付けは両方のカーブに等しく乗り、差分で打ち消えます。校正が要るのは絶対値と単体の形であって、同条件の比較ではありません。
絶対SPL(何dB)は校正なしで出る?
出ません。オフセットを与えていないと、Sonirは相対のdBFS表示にフォールバックします。騒音値やラウドネスの絶対値がほしいなら、校正ファイルか基準音源でオフセットを合わせてください。
内蔵マイクの周波数特性は補正できる?
内蔵マイクには公表された周波数特性がないので、専用の校正ファイルは基本ありません。中高域と絶対値まで信用したいなら、校正ファイル付きの測定用マイク(UMIKなど)を使うのが現実的です。内蔵マイクは相対とA/Bに割り切ります。
どの形式の校正ファイルが使える?
UMIK(miniDSP)、REW、FRDのテキスト形式に対応します。どれにも当てはまらない汎用の数値テーブルも、数値行として読み取ります。
校正なしで自動PEQは出せる?
出せません。Sonirの自動PEQは校正ファイルを登録したマイクのときだけ生成します。未校正でも、周波数特性の表示とターゲット曲線の重ね描きまでは見られます。
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Sonirで測る
Sonirはスマホで音響測定と比較を完結させるアプリです。本記事の周波数特性も、校正マイクがなければ相対カーブと同条件A/Bとして、校正ファイルを入れれば中高域と絶対値まで、そのまま測れます。測定から帯域別の深掘りまで全機能が無料です。
App Storeでダウンロード。Android版は近日公開。詳しくは機能ページへ。