Sonir/Blog/公開日 2026-06-24

RT60が異常に長く出る原因は?録音クリップを疑う

RT60が異常に長く出る最大の原因は、部屋ではなく録音のクリップ。減衰カーブの頭がつぶれて傾きが寝る仕組みと、録音ピークを -6〜-12 dBFSに収めて防ぐ手順を解説する。

rt60faq
nadai
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Sonir. 開発者

「RT60が2秒近く出た。うちの部屋、そんなに響くわけがない」。その違和感はだいたい正しい。壊れているのは部屋ではなく録音のことが多い。

結論

RT60が異常に長く出る最大の原因は、部屋ではなく録音のクリップ。減衰カーブの頭がつぶれて傾きが寝るので、実際より長い値や壊れた値が出る。録音ピークを -6〜-12 dBFSに収めれば、大半はこれで直る。

なぜそうなるか

RT60は減衰の「傾き」から出す指標だ。スイープ録音がクリップすると波形のピークが頭打ちになり、立ち上がり付近のエネルギーが本来より小さく記録される。するとシュレーダー積分でできる減衰カーブの頭がつぶれ、傾きが寝る。傾きが寝れば、-5〜-35 dBの区間から60 dBぶんを外挿したときの時間が伸びる。これが「実際より長いRT60」の正体だ。ひどいと回帰がまともに引けず、値が壊れてNaN近くまで飛ぶ。

やっかいなのは、これが良かれと思った操作で起きること。「大きく録ったほうがS/Nが良いはず」と音量を上げると、エネルギーの大きいスイープ中域でクリップする。S/Nを上げようとした行為が、そのままRT60を壊す。Sonir開発チームでもスイープランナーの初期に録音が0 dBFSへ張り付いてRT60がNaNになり、原因が部屋でないと気づくまで半日溶かした。

クリップで寝る減衰カーブ 正常な減衰は素直に落ちる(青)。クリップすると頭がつぶれて傾きが寝て(赤)、60 dB外挿の時間が伸びる

原因を切り分ける手順

順番に潰せば、部屋の問題かどうかはすぐ分かる。

  1. 録音ピークを見る: まず録音レベル。ピークが0 dBFSに張り付いていたり、クリップ警告が出ていれば原因はこれ。狙いは -6〜-12 dBFS。
  2. 音量を下げて録り直す: クリップしていたら、スピーカーの音量をクリップ手前まで下げて測り直す。たいていこれでRT60は正常値に戻る。
  3. SNRはスイープの長さで稼ぐ: 音量を下げてS/Nが足りないと感じても、音量は戻さない。スイープを長くする。長いスイープは相関処理で雑音に強く、音量を上げずにS/Nを底上げできる。暗騒音が減衰の尾に被ると、そこでも傾きが寝る。
  4. AGCを切る (Android): 静音区間で勝手にゲインが上がる端末では、減衰の尾が持ち上がって長く出る。SonirはAGCを抑える処理を持つが、端末によっては内蔵マイク側で粘る。
  5. 帯域別で部屋と切り分ける: ここまでで直らなければ、初めて部屋を疑う。オクターブ帯域別に割って、低域だけ伸びているなら定在波。全帯域で一様に長いなら、まだ録音側を疑う余地がある。

ちなみにクリップの逆、暗騒音やAGCで減衰の尾が持ち上がる場合も傾きは寝る。ただ頻度で言えば、まず当たるのはクリップのほうだ。

よくある質問

RT60が壊れる原因はクロックドリフトですか?

よく疑われますが、スマホ測定で異常RT60の主因はクリップです。再生と録音のドリフトはあっても、傾きをここまで壊しません。まず録音ピークが -6〜-12 dBFSに収まっているかを見てください。

クリップしていないのにRT60が長いです。

次に暗騒音とAGCを疑います。減衰の尾が暗騒音の床に被る、またはAGCで持ち上がると傾きが寝ます。スイープを長くしてSNRを稼ぎ、自動ゲインを切ると安定します。

録り直すたびにRT60が違います。

録音ピークが毎回ばらついている可能性が高いです。ピークがクリップ手前で一定でないと傾きもばらつきます。-6〜-12 dBFSに固定して録ると再現性が出ます。

音量はどこまで下げればいいですか?

ピークが -6〜-12 dBFSに収まるまで下げます。それでS/Nが足りなければ、音量ではなくスイープを長くして補います。順番を逆にしないのが安定への近道です。

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