Sonir/Blog/公開日 2026-08-07

定在波とは?部屋の寸法で決まる低域のピークとディップ

定在波は壁のあいだを音が往復して生まれる部屋の共振。周波数は寸法から計算でき、低域に±10 dB級の山と谷を作る。ディップをEQで埋めてはいけない理由まで。

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nadai
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Sonir. 開発者

同じ部屋で、同じスピーカーで、48Hzだけが+9 dB出ていた。ケーブルを替えても、スピーカーを別のものにしても、その山は同じ場所に立ったままだった。動いたのは椅子を1m引いたときだけ。犯人は機材ではなく部屋の寸法だった。

結論

定在波とは、相対する壁のあいだを音が往復して重なり合い、特定の周波数で立ちっぱなしになる共振のこと。周波数は部屋の寸法だけで決まる。壁から壁までの距離をL(メートル)とすると、一番低い共振は 172 ÷ L Hz、その整数倍にも立つ。3.6mなら48Hz、96Hz、143Hz。この共振が低域に±10 dB級の山と谷を作り、部屋の音の癖の大半を作っている。山はEQで削れる。谷は埋まらない。

部屋の寸法から周波数が出る

音速は約343 m/s。壁のあいだの距離Lにちょうど半波長が収まる周波数で、行きの波と反射して戻る波が同じ位置で重なり続ける。式にすると、f = 343 ÷ (2L)、つまり 172 ÷ L になる。3辺それぞれに立つので、6畳間 (およそ2.7 × 3.6 m、天井高2.4 m) なら次のようになる。

寸法1次モード2次3次
3.6 m (長辺)48Hz96Hz143Hz
2.7 m (短辺)64Hz127Hz191Hz
2.4 m (天井高)72Hz143Hz215Hz

これが軸モード。壁2枚だけを使う一番強いモードで、まずこれを疑えばだいたい当たる。実際には4面を斜めに回る接線モード、8隅を使う斜めモードも加わるが、レベルは軸モードより低い。ついでに言うと、上の表で3.6mの3次と2.4mの2次がどちらも143Hzで重なっている。こういう重なりが山を高くする。

山と谷はどこに立つか

モードには形がある。壁面は必ず圧力の腹 (山) になり、1次モードでは部屋の中央がちょうど節 (谷) になる。だから部屋の真ん中に座ると48Hzが抜け、壁際に寄せると同じ48Hzが膨らむ。同じ部屋、同じ音源で、座る場所だけで低音の量が変わるのはこれが理由。

定在波の1次モード。壁際が腹、部屋の中央が節になる 壁のあいだに立つ1次モード。壁際で低音が膨らみ、中央で抜ける。f = 172 ÷ L(m)

大事なのは、この形が部屋に固定されていること。マイクを少し動かしても山は山のまま残る。再現性があるからEQで削れば耳の位置でも実際に削れる。300Hzより上で周波数特性が暴れるのは反射の重なりが原因で、そちらは位置を10cm変えるだけで山と谷が入れ替わるためEQで追ってはいけない。境目の目安がシュレーダー周波数で、一般的な部屋では200〜300Hz付近にある。

谷を埋めようとしない

低域の谷は、反射波が直接音を打ち消して生まれる。位相で消えているものは、同じ周波数を足しても同じ比率で消える。+10 dB持ち上げてもカーブの谷は残り、アンプとスピーカーのヘッドルームだけが減る。低域は最もパワーを食う帯域なので、ここでの無駄なブーストは歪みに直結する。

正直に書くと、これに気づくまでに半日溶かした。画面のカーブを平らにすることと、部屋の低音が良くなることは別の話だった。谷が深いときの正解はEQではなく、スピーカーかリスニング位置を数十cm動かすこと。節から外れれば谷は自然に浅くなる。

対処の順番はこうなる。1. 位置を動かす → 2. コーナーに低域用の吸音を入れる → 3. 残ったピークだけEQでカットする。EQは最後の仕上げで、しかも削る方向にしか使わない。

手順: 自分の部屋の定在波を見つける

  1. 部屋の3辺を測る: 長さ・幅・天井高をメートルで測り、それぞれ172÷距離を計算する。2倍・3倍の周波数もメモしておく。
  2. リスニング位置でスイープを測る: 耳の位置にマイクを置き、録音ピークを -6〜-12 dBFSに収める。クリップすると周波数特性ごと崩れる。
  3. 計算値と山を照合する: Sonirの周波数特性で20〜300Hzを拡大し、計算した周波数の近くに山があるか見る。±10%程度で合っていれば軸モードで確定。
  4. 位置を変えて測り直す: マイクを50cmほど動かして再測定。動かない山が定在波。位置で入れ替わる凹凸は反射由来なので触らない。
  5. 山だけカットする: Sonirの自動PEQは20〜300Hzだけを対象に、カット最大 -12 dB、ブースト最大 +6 dBでフィルタを立てる。谷は埋めない。

よくある質問

定在波は吸音材で消せる?

消せません。減衰を早めることはできますが、低域の波長は数メートルあるため、一般的な吸音パネルの厚みでは効きません。効かせるならコーナーに置く低域用の吸音 (ベーストラップ) が要り、それでも共振そのものは残ります。

部屋の中央に座れば平坦になる?

逆です。1次モードの節 (圧力ゼロの点) が部屋の中央にあるため、中央では低音が抜けて痩せます。壁際は腹にあたるので逆に膨らみます。どちらも極端で、実用上は壁からの距離を寸法の3分の1程度ずらした位置が扱いやすくなります。

正方形の部屋が良くないと言われるのはなぜ?

縦横の寸法が同じだと軸モードの周波数も同じになり、複数のモードが同じ周波数に重なるためです。山はより高く、モードのない周波数はより空きます。寸法比が整数比から外れている部屋ほどモードが分散して穏やかになります。

計算だけで定在波の周波数はわかる?

軸モードの目安は出ますが、実際とはずれます。開口部や壁の材質、家具、斜めに走る接線・斜めモードが加わるためです。計算値は測定で山を探すときの当たりをつける材料と考え、最終的にはスイープで実測して照合します。

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