ウォーターフォールは3次元に見えるが、読むところは1つしかない。他より遅く沈む帯域があるかどうか、それだけだ。
結論
横軸が周波数、縦軸が時間、高さと色がレベル。全帯域が揃って沈めば健康な部屋、1本だけ尾を引いていればその周波数が共振している。見つけた周波数を周波数特性のピークと突き合わせれば、吸音かEQかの判断材料になる。
何を積み重ねた図なのか
IRの各時刻から先だけを切り出してFFTにかけ、時間方向に並べたのがウォーターフォール(CSD、累積スペクトル減衰)。
スペクトログラムと見た目が似ているせいで混同されるが、切り出す窓が違う。スペクトログラムは「その瞬間に何が鳴っていたか」、ウォーターフォールは「その時刻以降にまだ何が残っているか」。だから音楽ファイルに対して意味を持つのはスペクトログラムで、部屋に対して意味を持つのはウォーターフォールになる。
Sonirの実装は1024点のFFTを256サンプルずつずらして積む。48 kHzなら約5.3 ms刻みだ。周波数は50 Hz〜16 kHzを64点、log等間隔に取る。色はピーク基準で0〜-60 dB。時間軸は直接音を0 msに合わせ、表示する長さはRT60の1.2倍で切っている。
上が直接音、下に行くほど後の時刻。他の帯域が数十msで沈むなか、133 Hz付近だけ残り続けている
読むときは縦に切る
横方向、つまり周波数特性としてウォーターフォールを読もうとすると失敗する。それは周波数特性グラフの仕事だ。ウォーターフォールで見るのは縦方向、同じ周波数が時間とともにどれだけ速く落ちるか。
一様に沈んでいれば読むものはない。よくあるのは低域の1〜2本だけが遅れて沈むパターンで、これが定在波。次に多いのが5〜8 kHz付近が薄く長く残るパターンで、こちらは部屋というより硬い面の初期反射やスピーカー側の癖を疑う。
低域では分解能が足りない
ここが一番誤解される。1024点のFFTを48 kHzで回すと、1ビンあたり約46.9 Hz、窓の長さは約21.3 msになる。80 Hzのモードと120 Hzのモードは1ビンしか離れていないので、ウォーターフォール上では分離しない。2本あっても1本の太い尾に見える。
窓を長くすれば周波数分解能は上がるが、そのぶん時間分解能が落ちて「いつ沈んだか」がぼやける。逆に窓を短くすれば時間は追えるが低域が潰れる。この二律背反はCSDという表示方法の構造そのもので、設定を変えて解決する類の問題ではない。REWでもデスクトップの測定ソフトでも事情は同じだ。
だから低域のウォーターフォールは、モードの本数を数える道具ではない。「この辺が遅い」の当たりをつけるまでが仕事で、そこから先は周波数特性のピーク位置と、必要ならオクターブ帯域別のRT60に渡す。Sonirなら帯域別のRT60まで無料で見られるが、当たりをつけるだけならブロードバンドの測定で足りる。
余談だが、ウォーターフォールは見栄えがするので測定結果のスクショで真っ先に貼られやすい。ただ実務で判断を変えるのは、たいてい周波数特性と帯域別RT60の数字のほうだ。
よくある質問
ウォーターフォールとスペクトログラムは何が違いますか?
切り出す窓が違います。スペクトログラムはその瞬間に鳴っていた音を並べたもの、ウォーターフォールはその時刻以降に残っているエネルギーを並べたものです。前者は音源の中身を見るのに向き、後者は減衰の速さを帯域ごとに見るのに向きます。
ウォーターフォールは何秒ぶん表示されますか?
測定ごとに変わります。SonirはRT60の1.2倍を目安に時間軸を切り、RT60が出ていない場合はEDTから推定します。残響が短い部屋では自動的に短い窓になるので、他の測定と横並びで長さを比べる用途には使えません。
低域のリンギングが太く見えるのはなぜですか?
分解能の限界です。1024点のFFTを48 kHzで回すと1ビンあたり約46.9 Hz。100 Hz以下では隣り合うモードが同じビンに入るため、複数の共振が1本の太い尾に見えます。本数を数える用途には使えません。
ウォーターフォールは無料で使えますか?
無料です。スイープ測定からのIR、RT60・EDT・C50・D50、ウォーターフォール、ETC、周波数特性までは無料で使えます。オクターブ・1/3オクターブの帯域別解析も帯域限定スイープも無料です。
全面が同じ色でのっぺりして読めません
録音がクリップしているか、SNRが足りていません。クリップすると減衰の傾きが寝るのでどの帯域も同じ速さに見えます。まず録音ピークを-6〜-12 dBFSに収め、それでも読めなければスイープを長くしてSNRを稼いでください。
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Sonirで測る
Sonirはスマホで音響測定と比較を完結させるアプリです。本記事のウォーターフォールも、スイープを流して録るだけでIRから自動で描かれます。測定からオクターブ帯域別の深掘りまで全機能が無料です。
App Storeでダウンロード。Android版は近日公開。詳しくは機能ページへ。