Sonir/Blog/公開日 2026-06-16

スマホで周波数特性を測ってルームEQをかける完全ガイド

周波数特性をスマホで測り、ルームEQで部屋の癖を補正する完全ガイド。実測FRの見方、ターゲット差分からの自動PEQ生成、REW / APOへのエクスポートまで。

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nadai
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Sonir. 開発者

周波数特性を測っても、グラフを見て「低域が膨らんでるな」で終わってしまう。本当に効くのは、測ったあとに部屋の癖を引き算する工程です。Sonirはスマホのスイープ1本から周波数特性を出し、そのままルームEQの処方箋まで作ります。

結論

スマホでスイープを録れば、部屋の周波数特性が出ます。そこにターゲット曲線を重ねて差分を取り、低域 (目安20〜300Hz) に自動でPEQを立てれば、部屋の癖はかなり整う。SonirはこのPEQをREW / Equalizer APO形式で書き出せるので、測った補正をそのまま再生側に流し込めます。ただしEQで素直に効くのは低域で、ディップ (谷) は持ち上げない、絶対精度には校正ファイルが要る。この2点だけは外さない。

周波数特性とは何を見ているか

周波数特性 (FR) とは、各周波数で音がどれだけ強く返ってくるかを1本のカーブにしたものです。部屋のどの帯域が出すぎ・出なさすぎかが一目で分かる。

Sonirが出すのは絶対レベルではなく相対カーブで、中域 (300Hz〜3kHz) を0 dBに正規化し、1/6オクターブで平滑化しています。だから読むのは「この部屋は80Hzが+8 dB盛り上がっている」のような帯域ごとの凸凹。マイクの個体差で全体が上下しても凸凹の形は残るので、相対比較には十分使えます。逆に「何dB SPL」という絶対値は内蔵マイク単体では出せない。ここは割り切る。

測るだけで終わらせない: ターゲットとの差分

FRを測って眺めるだけなら、SPLメーターに毛が生えた程度の話です。ルームEQの肝は、測ったFRと「こうあってほしい」ターゲット曲線の差を取り、その差をフィルタで埋めにいくところにあります。

周波数特性からPEQを作る信号フロー 実測した周波数特性からターゲット曲線を引いて誤差を出し、低域に自動でPEQを立て、REW / APOへ書き出す

流れはこう。測定したカーブ (measured) から目標のカーブ (target) を引いて、誤差 (error) を出す。この誤差が、部屋がターゲットからどれだけ外れているかの地図になります。あとはこの地図の山と谷を、EQで均しにいくだけ。

ターゲットは1本ではありません。用途で選ぶ。

プリセット向いている人
Flat全帯域フラット計測志向・ニアフィールドのモニター
傾き (tilt)緩い右肩下がり (傾き可変)一般リスニング。高域がきつくなりすぎない
Harman低域を少し持ち上げ高域を緩く落とす定番カーブを知っている人
B&K低域ブースト + 高域漸減クラシック・アコースティック寄り

Flatと傾きは素直に効きます。HarmanやB&Kは低域シェルフと傾きの組み合わせで近似していて、どれを選んでも「中域0 dB基準でどれだけ外れているか」の差分を作る点は同じ。最初はFlatか緩い傾きで測って、低域がどれだけ暴れているかを見るのが分かりやすい。

EQで素直に効くのは低域だけ

ここがいちばん誤解されるところです。部屋のFRを全帯域フラットにしようとすると、たいてい悪化します。

理由は2つ。1つは、中高域の凸凹はリスニング位置を数cm動かすだけで形が変わる櫛形フィルタで、特定の山をピンポイントで削っても別の位置では逆効果になる。もう1つは、ディップ (谷) の多くは部屋の打ち消し、つまり定在波のヌルで、EQで持ち上げてもエネルギーが戻らず、ヘッドルームを食うだけで終わる。

だからSonirの自動PEQは、既定でEQをかける帯域を20〜300Hzに絞っています。これはシュレーダー周波数 (部屋がモード支配からディフューズに移る境目、目安250〜300Hz) 以下、つまり部屋のモードが効く低域です。ここはEQが素直に効く。上限はスライダーで80〜500Hzの範囲に動かせます。中高域はターゲットへの緩い傾き合わせに留め、山を1本ずつ潰すような真似はしない。

そしてブーストよりカットを優先する。谷を埋めるより、出すぎた山を削るほうが安全で、ヘッドルームも守れます。既定はブースト+6 dBまで、カットは-12 dBまでと非対称にしてある。この「カット寄り」の設計が、フラットを追い過ぎて壊すのを防ぎます。

自動PEQの作り方

差分が出たら、あとはそれを打ち消すPEQを置くだけです。とはいえ手で1本ずつ置くのは面倒なので、Sonirは貪欲法 (matching pursuit) で自動配置します。

やっていることは単純。誤差 (error) の絶対値がいちばん大きい周波数を見つけ、その山か谷の-3 dB幅からQを推定し、ピーキングフィルタを1本立てて応答を差分から引く。これを残差が十分小さくなるまで、または上限本数 (既定で最大10本) まで繰り返す。最後に、ブーストぶんでクリップしないよう負のプリアンプを自動で算出します。

生成されたフィルタ一覧 (PK 42Hz Q1.4 -6.0dB のような並び) とプリアンプ、補正後の予測カーブまで、Sonirは無料で画面に出します。処方箋は見せる。課金が要るのは、それを外に持ち出すエクスポートだけです。

ただし自動PEQには校正が前提です。マイク自身の色付けを部屋の癖と取り違えてEQで潰すと逆効果なので、Sonirは校正ファイルを読み込んだ状態でないと自動PEQを出しません。可視化 (measured vs target) は未校正でも見られますが、本気で補正をかけるなら校正ファイル (.txt) を1枚用意してください。

REW / APOへ書き出す

作ったPEQは、Sonirの中だけで完結しても意味が薄い。再生側にかけて初めて部屋が変わります。

書き出せるのはREWの「Filter Settings」形式とEqualizer APOのconfig.txt形式。Preamp: -3.0 dB に続いて Filter 1: ON PK Fc 42 Hz Gain -6.0 dB Q 1.40 のような行が並ぶ、定番のテキストです。REWに読ませて詰め直すもよし、APOでPCの再生に直接かけるもよし。WiiMやRoonへの直接書き出しは形式確認待ちで保留しています。measured FRそのものをCSVで出すこともできるので、自前の設計に渡す逃げ道もある。

よくある失敗

踏みやすい順に並べます。

いちばん多いのが谷の持ち上げ。FRに深いディップがあると埋めたくなりますが、前述の通りヌルはEQで戻りません。持ち上げるほどヘッドルームを失って歪むだけ。次が、校正なしで形を信じること。未校正の内蔵マイクのカーブには部屋の癖とマイクの癖が混ざっていて、傾向を見る分にはいいが、絶対精度の補正には校正ファイルが要ります。

地味に効くのが1点測定です。リスニング位置の1点だけで測ると、その点にたまたま出た谷を拾って大ブーストし、少し頭を動かすと破綻する。本来は位置を少しずつ変えて測り、パワー平均したFRをEQ対象にするのが正解です。

余談だが、深夜に静けさを待つよりは、長めのスイープを昼間に流したほうが安定することが多い。SNRは音量より時間で稼ぐ、はFRでも同じです。

まとめ

  • 周波数特性は相対カーブ。中域0 dB基準の凸凹を読む。スマホのスイープ1本で出る
  • ルームEQの肝は、測定FRとターゲットの差分 (error) を埋めにいく
  • EQが素直に効くのは低域 (目安20〜300Hz)。中高域の山潰しとディップの持ち上げはしない
  • 自動PEQは貪欲法でピーキングを配置、カット優先、負プリアンプ自動。校正が前提
  • REW / Equalizer APO形式で書き出して再生側へ。Sonirはプレビューまで無料、持ち出しがPro

よくある質問

校正マイクなしでルームEQはかけられますか?

傾向を見るだけなら内蔵マイクでも形は分かります。ただしSonirの自動PEQは校正が前提で、校正ファイル (.txt) を読み込んでいないと生成しません。マイクの癖を部屋の癖と取り違えて補正すると逆効果だからです。

ルームEQで最初に直すべき帯域はどこですか?

低域です。目安20〜300Hz、部屋のモードが効くシュレーダー周波数以下を優先します。中高域はリスニング位置で形が変わるので、ピンポイント補正はしません。

周波数特性のディップ (谷) はEQで持ち上げていいですか?

原則だめです。深い谷の多くは定在波のヌルで、EQで持ち上げてもエネルギーは戻らず、ヘッドルームを食って歪むだけです。出すぎた山をカットするほうを優先します。

SonirのPEQはどの形式で書き出せますか?

REWの「Filter Settings」形式とEqualizer APOのconfig.txt形式です。プリアンプ行とピーキングフィルタの並びを書き出し、再生側に流し込めます。measured FRそのものをCSVで出すこともできます。

中高域もEQで補正すべきですか?

原則しません。中高域の凸凹は位置依存の櫛形フィルタで、山を1本ずつ削ると別の位置で逆効果になります。ターゲットへの緩い傾き合わせに留めるのがマニア向けの正解です。

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Sonirで測る

Sonirはスマホで音響測定と比較を完結させるアプリです。本記事の周波数特性測定とルームEQも、スイープを流して録るだけでIRからFRを出し、低域のPEQまで自動で設計します。測定からPEQプレビューまで無料、REW / APOへのエクスポートと帯域別の深掘りはPro。

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