Sonir/Blog/公開日 2026-06-14

REWの代わりにスマホで測れるか:モバイル代替の現実

REWの代替をスマホで探すなら。デスクトップREWとモバイル測定(Sonir)の到達点と限界を、RT60・周波数特性・ルームEQ・歪み測定で並べ、用途別に整理します。

comparisonfrequency-response
nadai
nadai

Sonir. 開発者

部屋を測りたいだけなのに、ノートPCと測定マイクとオーディオインターフェース、それをつなぐケーブルを一式そろえて床に這わせる。この準備で挫けてREWを開かずに終わる人は多い。スマホで代わりになるのか、どこまでなら代わりになるのかを、正直に切り分けます。

結論

用途で割れます。

  • 据え置きで環境を組めて、歪みや多点平均まで追い込みたいならREW。無料でこの機能数は他にない、デスクトップ測定の事実上の標準
  • PCを出さず、測りたい場所へ持ち込んでRT60から周波数特性、低域のルームEQまでその場で出したいならSonir。スマホ1台で完結する
  • 実態としては競合というより役割分担。机に向かえるならREW、現場で測るならSonir

「REWの完全な置き換え」を期待すると外します。届く範囲と届かない範囲がはっきりしているので、そこを先に。

REWは何が強いのか

REWはデスクトップ測定の基準です。無料で、RT60もウォーターフォールも周波数特性も、さらに歪み(THD)や多点の空間平均、ターゲットに合わせたPEQフィルタの生成まで一通りそろう。UMIKのような測定マイクの校正ファイルもフルに読む。「とりあえずREWで測れば間違いない」と言われるだけの完成度があります。

制約は一つだけ、デスクトップであること。測りたい部屋にノートPC、オーディオインターフェース、測定マイク、ケーブルを持ち込んでセットアップする手間が前提になる。リスニングルームならまだしも、友人の部屋やショップ、賃貸の下見でさっと測る用途には向きません。機能で迷ったらREW、というのは今も動かない。

スマホはどこまで届くか

Sonirはそのセットアップごとスマホに畳んだアプリです。スピーカーからスイープを1本流して録ると、インパルス応答(IR)を取ってRT60・EDT・C50・周波数特性・ウォーターフォールまで自動で出る。低域(20〜300Hz)については測定した周波数特性とターゲットの差分から自動でPEQを組み、REWやEqualizer APOの形式でエクスポートできます。校正ファイル(.txt)を読み込めば内蔵マイクの色付けも補正する。

REWにない強みもあります。Sonirは測定だけでなく、録音物をA/Bで重ねたりABXブラインドテストで聞き分けたりまで1つで回せる。REWは部屋を測る道具で、録音物どうしを揃えて比べる機能は持たない。ここはモバイルの土俵というより、Sonirが埋めにいっている空白です。

比較表

同じ「部屋を測ってEQまで」を、据え置きのREWとスマホのSonirで並べます。

項目REW (デスクトップ)Sonir (スマホ)
RT60 / EDT / C50◎ 定番○ スイープ→IRから自動
周波数特性
ウォーターフォール
PEQ自動生成◎ 多バンド・全帯域○ 低域中心 (20〜300Hz)・要校正
PEQエクスポート◎ 各種形式○ REW / Equalizer APO
校正マイク◎ UMIK等フル対応○ 校正ファイル (.txt)
歪み (THD) 測定×
録音物のA/B・ABX比較×
必要機材PC + IF + 測定マイク + ケーブルスマホ1台
持ち運び× 据え置き◎ 現場で即
プラットフォームWindows / Mac / LinuxiPhone / iPad / Android
価格モデル無料基本無料 + Pro

歪み測定と多点平均、中高域まで自由に切るPEQはREWに分があります。逆に、機材ゼロで現場に持ち込めることと録音物比較はSonirだけ。

スマホで割り切れない部分

正直に書くと、REWの全部がスマホに乗っているわけではありません。歪み(THD)の測定はSonirにない。PEQも低域中心で、中高域までフィルタを自由に置くREWのような使い方はしない。これは中高域がリスニング位置依存で暴れやすく、ピンポイント補正がむしろ悪化させるから、という設計上の割り切りでもあります。多点を動かして空間平均を取る運用も、REWの方が成熟しています。

絶対SPLをスマホ単体で出せないのも変わりません。校正ファイルを入れて同条件で運用すれば相対測定は実用精度に届くけれど、校正なしの内蔵マイクを絶対値として信じるのは禁物です。これはどのスマホアプリでも同じ前提。

余談だけど、REWで多点平均をやろうとしてマイクを動かすたびにケーブルが家具に引っかかり、結局2点で妥協したことがある。機能が上でも、現場でその機能まで到達できるかは別の話だと痛感した。

用途別のおすすめ

  • 据え置きでガチの測定環境を組む: REW + 測定マイク。無料で機能最多、歪みも多点平均もここ
  • PCを出さず現場でRT60〜ルームEQまで出す: Sonir。スイープ1本でIRからまとめて出し、低域PEQはREW / APO形式で持ち出せる
  • 測ったうえで録音物も揃えて比べたい: Sonir。A/BとABXまで1つで賄える
  • REWの処方箋 (PEQ) を受信機に流したい: 測定はSonirで取り、エクスポートしたPEQをREWやAPOに渡す合わせ技も成立

要は二択ではなく、Sonirで現場を押さえてREWで腰を据える、の使い分けが実態に近い。スマホはREWの完全代替にはならないけれど、測りたい時に手元にある測定器、という別の価値で並びます。

よくある質問

スマホはREWの完全な代わりになりますか?

なりません。歪み測定や中高域まで自由なPEQ、多点平均の成熟度はREWが上です。ただRT60・周波数特性・低域のルームEQという日常的に使う範囲なら、Sonirがスマホ1台で実用域に届きます。

REWは無料なのに、なぜスマホアプリを使うのですか?

機材と場所の制約です。REWはPC、オーディオインターフェース、測定マイク、ケーブルの一式が前提。Sonirはスマホだけで、測りたい部屋にその場で持ち込める。機動力と引き換えに機能の幅を絞った関係です。

スマホ測定のPEQをREWに渡せますか?

渡せます。SonirはREW(Filter Settings)とEqualizer APOの形式でPEQをエクスポートします。測定はスマホで取り、フィルタを再生側やREWのプロジェクトに流し込む分担ができます。

校正マイクがなくてもルームEQは使えますか?

低域の癖を見るだけなら内蔵マイクでも傾向はつかめます。ただSonirのPEQ自動生成は校正を前提にしていて、校正ファイル(.txt)を入れて初めて実測の補正として信用できます。校正なしは目安と割り切るのが安全です。

関連記事


Sonirで測る

Sonirはスマホで音響測定と比較を完結させるアプリです。本記事のRT60・周波数特性・低域のルームEQも、スイープを流して録るだけでIRから自動算出。低域PEQはREW / Equalizer APO形式でエクスポートでき、録音物はA/BやABXで揃えて比べられます。基本計測は無料、帯域別の深掘りはPro。

iOS / Android、近日公開。詳しくは機能ページへ。