先週録った空気録音をもう一度録ったら、低域が明らかに薄い。スピーカーもアンプも触っていません。動いていたのは椅子と、その上に置いたスマホでした。
結論
録るたびに違って聞こえる原因は、だいたい4つに絞れます。音源、録音レベル、距離とマイク位置、部屋と時間帯。効き目もおおむねこの順です。裏を返せば、この4つを毎回同じにできたときだけ、残った差が本当に機材の差になる。Sonirは音源を同梱のリファレンスに固定し、レベルはゲインのロックとAGC殺しで押さえ、距離・機材・部屋はプリセットで呼び戻します。
左が録るたびに動くもの、右がそれを固定する受け皿
なぜそうなるか
いちばん大きいのに、いちばん見落とされるのが音源です。曲を変えれば帯域ごとのエネルギー分布が変わるので、周波数バランスもノイズフロアの見え方も別物になる。同じ曲でも再生位置が違えば、静かなイントロと厚いサビではまるで違う録音になります。だからSonirの録音タブは、鳴らす音源をアプリ同梱の固定波形「Sonir Reference」(ステレオ / 16bit / 44.1kHz・約34秒)に統一しました。好きな曲を自由に録る機能は、比較の土台が崩れるので外しています。
次がレベル。スマホのマイクは放っておくと自動ゲイン(AGC)が効いて、静かな部分を勝手に持ち上げます。これが入ると録音ごとにゲインがばらけ、ノイズフロアもダイナミックレンジも当てになりません。Sonirは録音開始時のゲインを全区間ロックし、AGCは機種ごとに切る作りにしてあります。狙うピークは-6〜-12 dBFS。
距離とマイク位置は、特に低域に効きます。部屋の定在波は場所によって山と谷が入れ替わるので、10cm動かしただけで低域が数dB変わる。高域のほうは向きに敏感で、15度ずらすと素直に落ちます。
最後が部屋と時間帯。深夜と昼では暗騒音の床が10 dB以上違うこともあり、そのぶん静かな箇所の印象だけが変わる。比べたい機材はまとめて、同じ時間帯に録ってしまうのが結局いちばん早い。
手順
- 毎回同じリファレンス音源で録る: 比較のたびに曲を変えない。同梱の固定波形なら、音源の差が最初から入らない。
- 出力先を決めて以後変えない: この端末のスピーカーで鳴らすか、ネットワーク機器に飛ばすかを先に決める。
- 入力ゲインを固定してAGCを切る: 録音中はゲインを動かさない。ピークは-6〜-12 dBFS。
- 距離・機材・部屋をプリセットで呼び出す: 名前付きで保存しておき、次の録音でそのまま適用する。
- スコアと周波数特性で答え合わせをする: クリッピングとノイズフロア、リファレンス基準の傾きを前回と見比べる。
記憶ではなく記録でそろえる
半年前の録音でスピーカーから何cm離していたか、覚えている人はいません。ここが再現性のいちばん弱い場所で、条件を固定する作法を全部知っていても、翌月には崩れる。プリセットは要するにその穴埋めで、部屋・機材・距離・音源をひとまとめの名前で保存し、次の録音に数タップで戻すためのものです。
それでも全部は消えません。内蔵マイクは個体でわずかに癖が違うし、置き替えのたびに数cmのずれは残る。正直なところ、内蔵マイク差の補正はまだ詰め切れていない部分です。ただ、揃えられるものを揃えてから残ったブレは、少なくとも「何が動いたか」を後から言える形になっています。
よくある質問
同じスピーカーなのに録音の印象が毎回変わるのはなぜですか?
録っている条件が毎回変わっているからです。効き目の大きい順に、音源(曲と再生位置)、録音レベルとAGC、距離とマイク位置、部屋と時間帯の4つ。機材を変えていなくても、この4つが動けば音は変わります。
どの要因がいちばん効きますか?
音源です。曲が違えば帯域ごとのエネルギー分布も静かな区間の位置も違うので、周波数バランスもノイズフロアも比較になりません。次がレベルで、AGCが効くと録音ごとにゲインがばらけます。低域だけを見るならマイク位置がいちばん大きく、10cmの移動で数dB動きます。
毎回同じ音源で録る必要がありますか?
比べるつもりなら必要です。Sonirは録音タブの音源を同梱のリファレンス波形に固定し、好きな曲を自由に録る機能は外しました。全録音が同じ波形なら、差分を部屋・機材・マイクに切り分けられます。
別の日に録った2本を比べてもいいですか?
条件がそろっていれば比べられます。距離・機材・部屋はプリセットで戻せますが、暗騒音の床は時間帯で動くので、録音スコアのノイズフロアが前回と近いかを確認してください。深夜と昼で10 dB以上違うこともあります。
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Sonirで録る
Sonirはスマホで空気録音・音響測定・比較を完結させるアプリです。本記事の条件固定も、リファレンス音源の再生からゲインのロック、プリセットでの呼び出し、録音スコアと周波数特性の確認までアプリのなかで通しでできます。録音スコアも音色の比較も、測定どうしの重ね描きも無料です。
App Storeでダウンロード。Android版は近日公開。詳しくは機能ページへ。