Sonir/Blog/公開日 2026-06-13

空気録音を同条件で比較する方法: 録り方と聴き分けの完全ガイド

空気録音の比較は、同じ条件で録ることから始まる。音量・距離・部屋・機材を固定して録り、レベルを揃えて聴き分けるまでの手順を、スマホで完結する形で解説する。

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Sonir. 開発者

「同じスピーカーなのに、録るたびに印象が違う」。空気録音をやり込むほど、この壁に必ずぶつかります。原因の多くは機材ではなく、録音の条件がそろっていないこと。音量が少し違う、立ち位置が10cmずれた、エアコンを切り忘れた。それだけで「差」は簡単に化けます。

結論

空気録音の比較は、録る前に条件を固定した時点でほぼ決まります。音量(レベル)・距離・部屋・マイク位置を固定し、入力ゲインを変えずAGCを切って録る。比べるときはレベルを±0.1 dBまで揃えてから、測定で客観的に重ねるか、ABX盲検で聴き分ける。Sonirはこの「録って・揃えて・比べる」を一連の流れとしてスマホに収めています。

空気録音が録るたび違って聞こえる理由

空気録音とは、スピーカーから出た音を部屋の空気ごとマイクで録ること。ヘッドホン出力を直接取るのと違い、部屋とマイクと立ち位置がまるごと結果に乗ります。これは弱点ではなく、空気録音の本質です。実際に耳で聞いている音に近いものが録れる。ただしその分、条件のブレがそのまま音のブレになる。

ブレる要因はだいたい4つに分かれます。音量、距離、部屋(時間帯の暗騒音を含む)、マイク。このうち音量が一番たちが悪い。人はわずかに大きい音を「良い音」と感じるので、コンマ数dBの差が「機材が良くなった」という錯覚にすり替わる。ケーブルやDACの「激変」報告のかなりの部分は、ここで生まれています。

同条件で録って比べる流れ 音源を固定条件で録り、ライブラリに条件ごと残して、レベルを揃えてから測定かABXで比べる

同じ条件で録る:固定する4つ

録り方の作法はシンプルで、要は「次に録るときも同じにできる形」で固定するだけです。

音量から。スピーカー側の音量を決めたら、二度と触らない。録音側はピークが-6〜-12 dBFSに収まるレベルを狙います。ここを外してクリップさせると、波形の頭が潰れて、後段の比較も測定も一気に崩れる。逆に小さすぎると暗騒音に埋もれて、これも比較にならない。

入力ゲインとAGCはセットで殺します。スマホのマイクは放っておくと自動ゲイン(AGC)が効いて、静かな部分で勝手に音を持ち上げる。これが入ると録音ごとにゲインがばらけて、比較が成立しません。Sonirは録音中の入力ゲインを固定し、AGCを機種ごとに確実に切る作りにしています。静かな曲でいきなり飽和する、という定番のトラブルはここを殺さないと消えない。

距離とマイク位置。スピーカーからの距離、マイクの高さと向きを決めて、メジャーで測って記録する。「だいたい同じ場所」では足りません。10cm、向き15度の違いが、特に高域と定位にはっきり出ます。

最後に部屋。窓やカーテン、家具の配置、そして録る時間帯。深夜と昼では暗騒音の床が10 dB以上違うこともある。同じ条件で比べたいなら、できれば録り比べる機材はまとめて、同じ時間帯に録ってしまうのが楽です。

条件を持ち越す:あとで同じに録るために

ここまで固定しても、人間の記憶は当てになりません。「あのとき距離は何cmだったか」を半年後に覚えていられる人はいない。だからSonirは録音と一緒に、使った機材・距離・部屋タグを自動で書き留めます。次に比べたい機材を録るとき、前回と同じ条件を呼び出して再現できる。条件をそろえる作業を記憶力に頼らせない、という地味な部分が、比較の再現性をいちばん支えています。

同じ条件で比べる:測定と聴き分け

録れたら比較ですが、その前に一段考えることがあります。「物理的にどう違うか」と「人が聞き分けられるか」は別の問いで、混ぜると結論が壊れる。Sonirの比較は最初にこの2つを分けます。

比べたいもの向くモード出る結論
スピーカー・ヘッドホン・部屋測定を重ねる(客観)「○Hzで△dB違う」
アンプ・DAC・ケーブルABX盲検(主観)「有意に聞き分けた / 偶然の範囲」
音源ファイル・EQのオン/オフABX盲検(主観)同上

変換器そのもの、つまりスピーカーやヘッドホンの優劣は、聴き比べでは決まりません。マイク1点を通すと定位も音場も落ちて、音色の粗い差しか残らない。これは測定で重ねるのが誠実です。一方アンプやDAC、ケーブルのような上流の機材は、空気録音にして盲検で当てられるかを見る。

どちらのモードでも前提になるのがレベル整合です。比べる2つを±0.1 dBまで揃える。同じ原盤どうしならRMSでほぼ合いますが、EQのオン/オフのようにスペクトルが変わる比較は、知覚されるラウドネスがずれるのでLUFSで揃える。ここを省くと、後の議論がまるごと音量差の話にすり替わります。聴いて結論を出すなら必ず盲検、というのも外せない。見ながらの聴き比べは確証バイアスで汚れるからで、このあたりはABXテスト入門に詳しく書きました。

別撮りの2録音に、何が混じっているか

正直なところ、ここが空気録音比較のいちばん難しいところです。機材Aで録った録音と、機材Bで録った録音を比べるとき、混じっているのは機材差だけではありません。録音したタイミングが違えば暗騒音も違うし、立ち位置がわずかにずれれば部屋の反射も変わる。別々に録ると2本のあいだに時間のずれも入る。「機材の差」と「録音条件の差」を原理的にきれいに切り分けるのは、実のところ難しい。

だから別撮り2録音のABXで言えるのは、厳密には「機材を変えて録り直したら、可聴差が出たか」までです。それでも十分に価値はある。条件をどれだけ固定できたかで、結論が機材差にどれだけ寄るかが決まるからで、さっきの「固定する4つ」が全部ここに効いてきます。ただ、完全には消せない交絡が残る、という前提だけは持っておいたほうがいい。ここは内蔵マイクの個体差も絡んできて、まだ詰め切れていない部分です。

スマホで録って比べる手順

手順そのものは短い。

  1. 機材と部屋を記録してから録り始める: 比べる機材・距離・部屋タグを先に記録する。次に同条件で録り直すときの呼び出しキーになる。
  2. 入力ゲインを固定してAGCを切る: 録音中はゲインを動かさない。AGCは静かな部分で音を持ち上げるので確実に切る。
  3. ピークを-6〜-12 dBFSに合わせて録る: スピーカーの音量を固定し、クリップさせないレベルで録る。
  4. もう一方を同じ条件で録る: 距離・マイク位置・時間帯をそろえて2本目を録る。
  5. レベルを揃えてABXか測定で比べる: 比較タブで±0.1 dBに整合し、機材はABX、スピーカーや部屋は測定で比べる。

よくある失敗

音量を揃え忘れて「機材が良くなった」と結論する。 これが断トツで多い。録るときの音量も、比べるときのレベルも、両方そろえないと意味がない。揃えに使ったdBを記録しない比較は、後から見返しても信用できません。Sonirが比較のたびに整合したdBを残すのはこのためです。

スピーカーの優劣を聴き比べで決めようとする。 マイク1点で録った音をいくら盲検にかけても、定位や音場は落ちているので、出てくるのは音色の粗い差だけ。スピーカーや部屋は測定で重ねるのが筋です。

時間帯を気にせず、別の日に片方ずつ録る。 暗騒音の床がずれて、静かな箇所の印象だけ変わる。録り比べるならまとめて録る。

ちなみに、こうして条件を詰めていくと、自分が「激変した」と思っていた変更の多くが、揃えた途端に差として残らなくなることがあります。気持ちのいい体験ではないけれど、それを淡々と確かめられるのが空気録音の面白いところでもある。

まとめ

  • 空気録音の比較は、録る前の条件固定でほぼ決まる。音量・距離・部屋・マイク位置を固定する
  • 録音ピークは-6〜-12 dBFS。入力ゲインを固定しAGCを切る
  • 比べるときはレベルを±0.1 dBに整合。同一原盤はRMS、EQで変わる比較はLUFS
  • スピーカー・部屋は測定(客観)、アンプ・DAC・ファイル・EQはABX(主観)
  • 別撮り2録音には録音条件差が混じる。固定するほど結論は機材差に寄る

よくある質問

空気録音とは何ですか?

スピーカーから出た音を、部屋の空気ごとマイクで録ることです。ヘッドホン出力を直接取るのと違い、部屋・マイク・立ち位置がまるごと結果に乗ります。耳で聞いている音に近いものが録れる代わりに、条件のブレがそのまま音のブレになります。

空気録音の比較で一番大事なことは何ですか?

録音レベルを揃えることです。人はわずかに大きい音を「良い音」と感じるので、コンマ数dBの差が機材の差に化けます。比べる2つを±0.1 dBまで整合し、同じ原盤ならRMS、EQで音色が変わる比較はLUFSで揃えます。

録音レベルはどのくらいを狙えばいいですか?

ピークが-6〜-12 dBFSに収まるレベルが目安です。クリップさせると波形の頭が潰れて比較も測定も崩れ、小さすぎると暗騒音に埋もれます。入力ゲインは固定し、録音中に動かしません。

スピーカーの優劣は空気録音の聴き比べで決められますか?

向きません。スピーカーはマイク1点を通すと定位も音場も落ち、音色の粗い差しか残りません。スピーカーや部屋は測定の重ね描き(客観)で比べ、アンプやDACなど上流の機材は空気録音にして盲検(ABX)で当てるのが誠実です。

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Sonirで録って比べる

Sonirはスマホで空気録音・音響測定・比較を完結させるアプリです。本記事の同条件での録音と比較も、入力ゲイン固定とAGC殺し、条件の自動記録、レベル整合からABXまでアプリのなかで通しでできます。聴き分ける主観モード(ABX)は無料、測定を重ねて客観的に比べるモードはPro。

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